2020/09/27
映画で学ぶ世界史・フランス革命・市民革命の時代『レ・ミゼラブル』
文豪ヴィクトル・ユーゴーの世界
前期単位認定試験の終わった学院では、映画で学ぶ世界史の授業・スクーリングを行いました。第三回目の今回はテーマを「フランス革命」、上映作品を「レ・ミゼラブル」にしてみました。この授業は任意選択参加の授業なので、文芸作品のミュージカル、大長編、それほど人数は集まらないだろうと思っていましたが、あにはからんや盛況ではありませんか。
ヴィクトル・ユーゴーの原作は文庫本でも4~5冊になる大河長編小説です。フランス近代文学・ロマン主義文学の代表作ですので、ぜひ読んでもらいたい作品ではありますが、無理やり読ませるような、無粋なことはいたしません主義なので、歌と音楽の伴奏付きで、圧巻の映像美をたっぷり楽しんでもらうことにしました。
1832年6月5日、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーはパリのテュイルリー庭園で戯曲を執筆しているとき銃声を聞きます。中心街に移動したユーゴーはサン・マルタン通りとサン・ドニ通りにバリケードを築いて抵抗する、市民、学生で組織された革命派と国王ルイ・フィリップを擁する七月王政政府軍の銃撃戦に遭遇することになります。
現場の目撃者であったことが作品執筆の原動力となったことは明らかで、終章のクライマックスともなっています。六月暴動は1789年のバスティーユ襲撃に始まるフランス革命史の中では扱いがあまり大きくありませんが、この作品によって一躍世に知られようになりました。革命支持、レプブリカンであったユーゴーの筆になる作品は市民、学生たちに強い共感を寄せて描かれています。
映画と文学・響き合う創造力
レ・ミゼラブルは著名な小説だけに幾度となく映画化され、今年封切のラジ・リ監督作品も名作の呼び声高い作品ですが、時代設定を現代に移していますので、今回は2012年のトム・フーパー監督のミュージカル作品をチョイスしました。やはり世界史の授業ですので、フランス大革命とくれば何と言っても二角帽子でなければなりません。
主演のヒュー・ジャックマン演じるジャン・ヴァルジャンもさることながら、ジャベール警部役のラッセル・クロウ、なかなかいい役者さんです。出世作となったグラディエーターでもそうでしたが、にこりともしないニヒルでクールなヒーロー像が粋ですね。懐かしのイギリスの名優リチャード・バートンを思わせます。ハリウッド俳優恐るべし、歌もお上手です。
偶然ですが前回上映の「英国王のスピーチ」と同じ監督さんです。市民の歓呼に応える国王ジョージ6世とその家族、同志や愛する人々とともに、民衆の歌を高らかに謳い上げるジャン・ヴァルジャン、吃音も彼の生涯も決して愉快なものではなかったと思いますが、ラストシーンでは巧みなカメラワークと細部まで徹底的にこだわった群衆映像によって、作品のテーマである、自由、未来、希望、愛を見事に表現しています。
奈良甘樫高等学院もそうですが、通信制高校の生徒たちの中には、転入学や編入学によって、他の高校から転校してきた生徒たちが大勢在籍しています。望んで入学した高校を辞めざるを得なかった、転入学生や編入学生たちの心中は察するに余りあります。それだけに私も卒業式では、卒業生たちの未来や希望を、華やかに、高らかに、謳い上げてあげたいと常に望んでいます。そうした意味でもこの二作品は、学院の教材としてピッタリの秀作ではないかと思います。
エピローグ・次回は映画ポスターも秀逸なあの大作です
この取り組みで威力を発揮してくれるのがサブウーファー、学院の教室は畳数にすると60畳以上ありますので、メインスピーカーだけでは役不足です。センタースピーカーとどちらにするか迷ったのですが、こちらにして正解でした。インシュレーターが少しばかり高価でしたが、低音はもちろん余韻や音感の改善で効果はバッチリ、銃撃シーンでは生徒たちがのけぞっていました。やはり映画は美しい映像と音響で楽しむに限ります。
次回の映画で学ぶ世界史はいよいよ最終回、テーマはヨーロッパ・啓蒙専制君主の時代「啓蒙思想と芸術家」、上映作品は本年のフィナーレを飾る大作、ソウル・ゼインツ製作、ミロス・フォアマン監督の「アマデウス」を予定しています。
リンク・映画で学ぶ世界史のシリーズ
英国史上最も内気で最も素敵な国王陛下
【英国王のスピーチ】
ローマ教皇も一押し!喜劇とホロコースト
駐日フランス大使館(もちろん日本語)「フランスを知る」のページもどうぞ