2024/06/02
橿考研・春季特別展『家形埴輪の世界』
地歴特別講義『日本古代史・考古学フィールドワーク』家形埴輪総選挙
奈良甘樫高等学院・広域通信制高校慶風高等学校奈良サポート校では、5月31日に地歴特別講義として、日本古代史・考古学フィールドワークを実施しました。これまで学校行事や学習活動で様々な博物館や美術館の展覧会、美術展を見学しましたが、今回の展示品は中でも白眉の逸品揃い、移動や輸送の困難により、過去にほとんど例のない注目の企画展です。
メインイベントとなるのは、学院の所在地、大和高田市の隣町、橿原市の橿原考古学研究所附属博物館で開催中の春季特別展『家形埴輪の世界』です。早や走り梅雨のシーズンとなり、あいにくの空模様となった奈良大和路ですが、これが幸い、他の団体や個人見学者がほぼいない中での実施となり、地歴公民の教員二名が解説しつつ、ゆったりと見学です。
古墳時代の埴輪総選挙・前方後円墳と飛鳥大和王権発祥の地元奈良県勢は苦戦中
橿原考古学研究所附属博物館は弥生時代、古墳時代の収蔵品で有名ですが、今回の特別展は大阪府の今城塚古墳や栃木県の富士山古墳など、全国で出土した重要文化財級の家形埴輪が惜しげもなく出品されています。写真撮影可、ガラスケースなしで展示されている遺物も多く、見ごたえのある企画展でした。いかに巨大円筒埴輪や形象埴輪、土器銅鐸の専門家とは言え、この超重量級で複雑な造りの大型埴輪の配置や展示を行った学芸員の皆さんはさぞ大変だったことでしょう。
注目の家形埴輪総選挙は展覧会の会期を半月残した時点で、宮崎県は西都原古墳群出土の豪華な子持ち家形埴輪と群馬県の赤堀茶臼山古墳、大阪府の美園古墳が接戦を展開中、当選確実は選挙戦終盤に持ち越しです。何れも個性的で独創的な造形表現の埴輪が支持を集め、票数が割れていることから察すると有権者の皆様はかなりの目利きとお見受けしました。
旧暦でも五月皐月になりました・五月雨の橿原神宮にておみくじと辰年の大絵馬
前方後円墳と古代倭国大和王権発祥の地、地元奈良県の遺跡では御所市の宮山古墳と天理市の小墓古墳が健闘中ですが、邪馬台国の女王卑弥呼や倭の大王の威信にかけて、逆転勝利を期待しましょう。高速道路のパーキングエリアに家形埴輪デザインのゲストハウスはどうかとは生徒達の意見ですが、中々面白い発想です。私が県知事なら即企画会議招集です。
帰路は足元が気になるものの、玉砂利と傘に落ちる雨音をBGMに、畝傍山を望む北の鳥居から風情ある参道を通って、神武天皇皇后をお祀りする橿原神宮を参拝、辰年の大絵馬で記念撮影です。おみくじを引いている生徒が多いですね。龍に雨は吉兆ですから、よい卦が出たのではないでしょうか。近鉄橿原神宮前駅で解散ですが、ここが最後の見学場所です。
レトロな駅舎も文化財・貴賓室がある戦前建築の近鉄橿原神宮前駅
近鉄橿原神宮前駅中央口駅舎は初代新歌舞伎座の設計で知られる建築家、村野藤吾氏の設計で、神武天皇即位紀元2600年祭に合わせ、1940年(昭和15年・皇紀2600年)に竣工しました。急角度の大屋根が特徴で、奈良の古民家に見られる大和棟の建築様式をモチーフとしています。駅舎内コンコースは天井が高く、豪華なシャンデリアと大和三山のレリーフで飾られた瀟洒な造りで、本日のフィールドワークの起点である畝傍御陵前駅の駅舎デザインも同様の意匠となっています。
また、近鉄橿原神宮前駅は橿原神宮参拝の玄関口であるだけでなく、全国的にもレアな標準軌(軌間1,435mm)の橿原線と狭軌(軌間1,067mm)の南大阪線・吉野線の乗換駅でもあります。普段登下校に神宮前駅を利用する生徒たちも多い学院ですので、知っておいても損のない鉄道トリビア、古代と近代が交差するフィールドワークでした。雨脚が強くなってきました。そろそろ解散しましょう。最後に万葉集から初夏の和歌を一首、万葉の大宮人は小粋なロマンティストです。
卯の花の過ぎば惜しみか霍公鳥(ほととぎす)雨間も置かずこゆ鳴き渡る(万葉集・大伴家持)
学校行事・学習活動リンク集
橿原考古学研究所附属博物館ホームページ
煙雨に霞む大絵馬の橿原神宮ホームページ
万葉集なら明日香村の万葉文化館がお勧め
『目に青葉山ほととぎす初鰹』ブログ記事
他の写真は学校行事フォトギャラリーです
学院の公式ブログ最新バージョンはこちら